『東黒田の住宅』
高速道路工事による移転新築の住宅で、旧宅は、田の字型のプランに縁側と土間があり、天井も高い元養蚕農家の木造住宅でした。主な要望は「収納スペースが多い」、「鉄骨造」のふたつ。移転のため、大量の荷物等の移動は必然であり、また、静岡という土地柄と老後の生活を危惧し、地震に過敏となり、鉄骨造がよいという強い要望がありました。そこで鉄骨造の特徴を最大限に活かしつつ、収納スペースを十分に確保できる住宅を提案しました。
構造は鉄骨造ですが、通常の鉄骨造ではコスト的な部分で難しいところがあり、軽量鉄骨を採用しています。この住宅は、トラス構造の一種で、フィーレンデールという工法により、大きな空間を実現しています。75角と125×75の柱とC-150×75の上下弦材の梁せい1545mmの軽量鉄骨を組合せたフィーレンデール梁の連続で大きな空間を構成しています。その梁下に入れ子状に水廻りや必要な室を配し、梁と梁の間をロフトとして機能させるシンプルな空間構成となっています。また、土間や縁側といった従来暮らしていた住宅の記憶を取入れ、外部環境との緩衝ゾーンを設ける計画としています。
1階のレベルとロフトのレベルの窓と建具の開閉により、通風をコントロールできます。また、大スパンとなっているため、内部が暗くなりがちですが、内部空間の光環境の向上のため、梁の間にハイサイドライトを設け、直下の居室だけでなく、建物の中程まで光を届ける配慮し、パッシブに対応したつくりとなっています。
この住宅は、各々の部屋は独立していながらも、ロフト部分を介してつながり、家のどこにいても、お互いの気配が伝わるようになっています。ロフトはイエ全体を見渡せたり、収納はもちろん、ときに書斎や遊び場等にもなります。また、実家機能の用途がはっきりしない室は、居場所をさまざまに設定することが可能になります。空間的奥行があるため、つながりながらもプライバシーを確保しつつ、生活に合わせ、機能を展開していける発展性や柔軟性を秘めた住宅になっています。